ここでは近年、大卒の価値が低下していること、そして高卒であることの優位性について考えてみます。現時点の日本において、就職や待遇面においては大卒のほうが高卒より有利だと考えている人が多いと思います。
たしかにそれは間違いではありません。
特定分野の就職においては、今でも大卒のほうが有利だと思います。しかしながら、高卒に有利な点があることもまた事実なのです。そもそも、大学へ行くことが当たり前のようになった今の時代、大卒の価値はどんどん低下しているのです。
飽和した大卒市場
文部科学省のHPに 学校基本調査というものがあります。これによると、令和元年度の高校卒業後の大学(短大含む)進学率は、58.1%となり過去最高となっています。この中で、専門学校への進学率は23.8%となっているので、高卒で進学しなかった人の割合は20%に満たないことになります。
つまり、今の日本社会においては圧倒的に大卒のほうが多いのです。
これでは需要と供給のバランスが崩れてしまいます。供給が過剰であれば、供給側の価値が下がるのは当然のことなのです。※ 需要=大卒求人数、供給=応募する大卒の数
二極化する大卒の価値
実際、10年ほど前に私が勤めていた会社(一部上場企業)の工場では、大卒の若者が何人も現場で働いていました。現場作業なのに、どう見ても高卒より大卒の若者のほうが多かったのです。あとで先輩に聞いてみたところ、その会社では同じ大卒でも中堅以上と中堅以下を明確に区別しているということでした。
中堅以下の大卒は高卒、短大、専門学校と同じあつかいで現場仕事
もちろん、現場仕事でも大卒であれば基本給に1万円くらいの差はあります。ただ、それはあくまでスタートラインの基本給ですから、何年かすれば高卒の人が大卒の人を追い抜くこともありました。その会社に勤めた期間、私はそういった事例を何度か目にしました。そのとき私は、今後は中堅以下の大学に行くことについて、あまり意味がなくなるだろうと感じたのです。
とはいえ、私は大学へ行くこと自体を否定するつもりはありません。勉学以外に学べることもありますし、友達との楽しい思い出もできます。そういったことも人生には必要ですから、その時を楽しめばいいと思います。
大卒の価値を低下させた要因
そのほかにも、大卒の価値を低下させる大きな要因があります。インターネットの普及です。
大学を卒業するということは、一定の知識を獲得した証明といえます。ところが、インターネットの爆発的普及により、誰でも簡単に膨大な量の情報にアクセスが可能となったのです。
これにより、高卒者でも大卒者以上の知識を持つ人が増えてきました。私たちの学生時代と比べても、今の若者たちは明らかに知的レベルが向上しています。このような状況になると、社会にでる時期が大卒者より早い高卒者は有利になります。仕事で実務経験を積みながら、自分の好きな分野の勉強が自由にできるからです。
また、大学に行くことのデメリットもあります。
大学では、いくつか科目を選択する必要がありますから、あまり興味のない科目でも1つや2つは選択することになります。当然、本人はそのような科目の授業には身が入りませんから、単位だけ取って卒業すれば、あとはなにも覚えていないという結果になるのです。
正直、そのような勉強にはあまり意味があるようには思えません。
それなら、早めに社会にでて実務経験を積みながら、自分に必要な分野の勉強に専念したほうが本人のためになります。そして、それを満たすための十分な環境が今は整っているのです。
ただ高卒の場合、まだまだ世間を知りませんから、ブラック企業に入って低賃金で牛馬の如く働かされるリスクもあります。ブラック企業では長時間労働が基本ですから、自分が勉強する時間など取りようもないのが現実です。
そうならなために、べつの記事では仕事の選び方やキャリアアップの方法についても紹介していこうと思います。