上下関係が人間関係をダメにする

上下関係という言葉を聞くと、あなたはどう感じるでしょうか?

日本社会では、ありとあらゆるところに、この上下関係という概念がつきまといます。

家庭においては親子や兄弟の関係、学校においては教師と生徒、あるいは先輩と後輩の関係。

社会にでれば、今度は上司や先輩にくわえ、顧客との関係もあります。世の中のほとんどの人は、なんの疑いもなく、この上下関係を社会の常識、当然のこととして受け入れています。

にもかかわらず、「上下関係についてどう思うか?」と聞くと、嫌だと答える人の割合のほうが必ず多くなるのです。

もちろん私も上下関係が嫌だと考えているうちの一人です。いえ、そんなものは必要ないとさえ思っています。

たしかに、現代の会社組織においては、指揮命令系統上、上下関係というものが必要でしょう。ただし、それはあくまで業務上の指揮命令系統についての話です。

日本社会における上下関係の問題点

今の日本社会における、上下関係の問題点は2つあります。

上下関係が個人の人格にまで立ち入ってしまうこと
相手に反論の余地を与えない空気を作ってしまうこと

「自分のほうが上だから、俺はお前よりすべてにおいて優れている」
このような勘違いを日本社会のあちこちで見かけます。

上下関係を嫌う人が多い最大の理由がここにあるのです。

親子関係においても、親のほうが子供より優れているから、子供は親のいうことをなんでも聞かなければならない。
学校では先生や先輩が上だから、先生や先輩のいうことが100% お前より正しい。
会社の上司や先輩、お客様はお前より上だから、俺たちはお前を好きなように使うことができる。

どれも完全に間違っています。

抑圧された人ほど上下関係にこだわる

上のような考え方は、相手の人格を無視し、強制的に相手の反論を抑え込んでいるのです。べつの言いかたをするなら、このような人たちは、自分が上だから 相手を支配してもよいと錯覚しているのです。

しかし、上記のような人たちほど人間関係に悩んでいるのです。「なぜ私の言うことを聞いてくれないのか?」「なぜ他人は自分の思い通りにならないのか?」と。

彼らのような人たちは、他人を支配したいという願望が強いため、「自分の思い通りになる人間などこの世に存在しない」という前提条件になかなか気づくことができません。

なぜそのようなことになるのかといえば、彼ら自身、それまで不自由な人生を送ってきているからです。

彼らのような人たちをよく観察してみると、

家庭でしつけの厳しい親から抑えつけられてきた
学生時代に部活などで厳格な上下関係にさらされてきた
会社では上司や顧客から厳格な上下関係を強いられている

このようなことが当てはまるはずです。

ゆがむ人間関係

とくに日本の中高年は家庭から会社にいたるまで、長期間にわたり厳格な上下関係のなかで生活してきた人ばかりです。

人間はどんな嫌な環境でも、そこで長期間生活していると、次第にその環境に慣れ、環境への疑いを持たなくなってしまうのです。

同時に、俺たちはそうやってきたんだから、お前たちもそうしろ」という歪んだ願望に駆り立てられる人もでてきます。

また不自由な人たちは、しばしばこのような言葉を使います。

「~はこうじゃないといけない」「~でないと絶対にダメだ」 実際はただの思い込みであることがほとんどなのですが、本人たちはそれが正しいと信じて疑いません。

当然、そのような硬直化した考えでは、自分の子供や後輩、部下たちから毛嫌いされることになります。これではまともな人間関係を築こうにも築くことができません。かりに築けたとしても長続きはしないでしょう。

私たちが生きている社会はどこまでいっても人間社会です。

人間社会でまともな人間関係を築けない人は、不幸への一本道しか残されていないことを知るべきです。

自分より上だとか下だとか、相手を支配したいとか、そのような矮小な考えはいますぐ捨てたほういいでしょう。そのほうが豊かな人間関係が築けますし、よい人間関係は自分の幸せにも繋がっていくからです。