必死にならない方がうまくいく

「必死になってやれ!」

私が若いころ、どの会社でもこのようなことを言われていました。私も社会に出たばかりのころは、何でも必死になってすることが良いことだと考えていた一人です。しかし、しばらくして気がついたのです。「そんな働き方、長続きするわけがない」

誰が考えたのか知りませんが、日本の漢字というのは本当によくできていると思います。この「必死」という漢字を改めて見てみると、”必ず死ぬ” という意味になっています。必ず死ぬような働き方をして、長続きするわけがありません。

今回は、これまでの私の経験も踏まえ、必死になることのリスク、なぜ必死にならない方がうまくいくのかについて考えてみます。

必死になると他のことを考えられなくなる

人は必死になると、目の前のことしか見えなくなります。それは同時に、目の前のこと以外は考えられなくなることでもあります。そうなると、人は他の可能性を考えられませんから、同じことばかりしかできなくなってしまうのです。

人生で自分の目的を達成するためには、たくさんの選択肢を持つことが絶対に必要です。

たとえば、あなたが自宅から5kmほど離れた駅に行くとしましょう。駅に行くには、徒歩や自転車、バス、タクシー、自家用車、バイク、市内電車など、いくつもの移動手段があります。このとき、自家用車でしか行けないと思い込んでしまえば、車が壊れたら一巻の終わり。駅に行く、というあなたの目的は達成できなくなってしまいます。

しかし、他の可能性を考えることができれば、駅に行くという目的を達成することは難しくありません。人生もこれと同じで、選択肢がいくつもあれば目的の達成がしやすくなるのです。

ところが、人は必死になると、目の前のことにばかりに気を取られてしまい、他の選択肢を考えられなくなってしまうのです。だから私は、必死になることは危険だと考えています。そこを利用しているのが、怪しい振興宗教やブラック企業と呼ばれる組織です。

ブラック企業は意図的に社員を必死にさせるよう仕向けている

ブラック企業などでは、社員を常に必死にさせる仕掛けがふんだんに盛り込まれています。社員同士の成績を競わせ、追い立て、成績の悪い人は吊し上げられます。なにか失敗をすると、金銭的なペナルティを課せられることもあります。当然、そんな会社はパワハラも日常的に行われています。オフィスでは毎日のように怒声が飛び交い、社内はいつも緊張した空気に覆われています。

そのような状況に置かれると、人は恐怖から逃げたいがため、必死になって成績を上げようとします。普通に考えれば、そんな会社すぐに辞めればいいのですが、恐怖からそんなことを考える余裕もなくなってしまうのです。実は、それこそがブラック企業側の望むところだとも知らずに・・・。

ブラック企業といわれるような会社は、職場環境や給与がよくないので、普通に運営すると、すぐに人が離れてしまいます。そのため、社員を無理矢理にでも定着させる必要があるのです。そこでよく使われるのが恐怖による支配です。

従業員を脅し、恐怖を与えることによって、「会社を辞めたら何をされるかわからない」といった方向に思考を向かわせ、精神と肉体を縛り付けるのです。他の可能性を考えられなくなった従業員は、泣く泣くその会社で働くしかないと考えるようになっていきます。

有名企業でも社員を必死にさせていた

10年くらい前までは、名前の知れた有名企業でも、社員を必死に働かせていました。ブラック企業と呼ばれた、某有名創業者の会社などでは、創業者自ら「必死になってやれ」と社員に発破をかけていたようです。その会社は、ネットの台頭により、パワハラ的なやり方が明るみに出て、世間から非難を浴びることになりました。結局、その会社は世間の非難に耐えきれず、創業者は方向転換を余儀なくされています。

このようなことをしてきた有名経営者の名前を、私は何人か思いつきますが、彼らは全員、大した苦労をせず成功した人たちだと思っています。マスコミではカリスマだ何だと持てはやされ、有名にはなっていますが、言っていることや実際にやっていることがあまりにも稚拙なのです。

彼らの書いた本を読んだこともありますが、誰でも言えるような綺麗事ばかり書いてあって、私には全然役に立ちませんでした。彼らのほとんどは、「とにかくがむしゃらになってやれば道は拓ける」みたいなことばかり書いているからです。

そもそも、本人が本当に苦労していれば、必死になることがどれだけ危険なことかを理解しているはずです。それが理解できていないということは、大した人生経験を積んでいないということです。物事をあまり考えなくてもやっていけた時代背景もあったのでしょう。彼らの時代はそれでよかったのかもしれませんが、今の時代はもうそれではやっていけないのです。

常に心に余裕を持つことが突破口になる

私も20代のころ、必死になってずいぶんと失敗をしました。仕事だけでなく、恋愛などはわかりやすい例で、必死になればなるほど、相手が離れていく経験をした人もいるでしょう。これは人生のあらゆることに当てはまります。少し力を抜いたほうが頭もよく回りますし、相手に気をつかう余裕も生まれるからです。

漫画などでもたまに2人の天才が競うシーンがあります。1人は本物の天才で、あまり努力をしないようなタイプ、もう1人は努力の天才で、必死になって勉強して相手に勝つというタイプ。努力の天才は必死になってもう一人の天才に勝とうとしますが、いくら努力しても勝てません。そこでなぜだと苦悩するのです。これは漫画だけの世界のように思いますが、脳の働きからすると実は当然のことなのです。

努力はたしかに必要です。ですが、あまり相手を意識して必死になると、頭に血が上って身体は緊張状態になります。緊張しているということは、身体中の血液の流れが悪くなるのです。当然、脳に送られる血液の量が減り、思考力にも影響が出てきます。反対に、一見するとあまり努力してない天才は、いつも気持ちがゆったりしていて緊張感がありません。そのため、身体中の血液もよく巡り、脳に血液がたくさん送られるので、頭の回転もよくなるのです。

これは実際に、自分の思考を客観的に見つめてみるとよくわかります。気持ちがゆったりしているときの方が、思考に広がりがでてくるのです。これは緊張しているときより、多くのことが思い浮かぶようになるということです。そして、緊張しているときより、多くの手段を考えられるということでもあります。

私は先に、「人生で目的を達成するためには、選択肢を多く持つことが絶対に必要」だと書きました。選択肢を多く持つためには、頭を冷静に保つ必要があるため、必死になってはいけないのです。かりに、必死になるとすれば「もうこれだけやれば結果はでる」という状況で、短期に集中してやるなら問題はないでしょう。それ以外で、必死になることは私はおすすめできません。

もし、今あなたの勤めている会社が、必死になることを強制するような会社であれば、今すぐに辞めたほうがいいでしょう。そのような会社で身をすり減らしてもジリ貧になるだけです。もっと精神的・肉体的に余裕を持って、働ける環境を探しましょう。そのような環境で努力をすれば、結果はいづれついてくるようになります。

これからの時代は、知識を取り込みどう使うかが重要なので、いつも頭がよく回る状態を維持しなければなりません。そのためには、必死になる必要などないのです。ゆったり構えてはいても、目的は鮮明に。それがこれからの時代の突破口になるのです。