「派遣から正社員になりたい」
このように考えている派遣社員の人は多いと思います。私も何度か派遣社員の経験があるので、この気持ちはわかります。今回は、私が派遣から一部上場企業に転職した経験から、正社員になるために派遣をどのように使うべきなのかについて書いてみます。
まず派遣の形態を知っておこう
まず最初に、派遣の形態を簡単に押さえておきましょう。派遣社員をしている人なら、知っている人もいる内容かと思いますが、ここを知っておかないと派遣から正社員への道は厳しくなります。派遣には、大きく分けて、次の2つの形態があります。
特定派遣(常用型派遣)
一般派遣(登録型派遣)
一般派遣は派遣会社に登録し、仕事があるときだけ働くという形態です。基本的には誰でも登録が可能で、パートやアルバイトと同じ感覚で手軽に働けるのがメリットです。お手軽な反面、給与は時給制で、仕事の紹介がなければ収入が安定しないというデメリットがあります。また、仕事の内容も単純作業が多く、企業側から見てあまり職務経歴上のプラスにはなりません。そのため、主婦や学生の小遣い稼ぎに使われるのが一般的です。
特定派遣(常用型派遣)
2015年に派遣法改正案が出てから、特定派遣の登録は現在行われていませんが、常用型派遣の形態は残っています。なので、ここでは特定派遣の名前を使って説明します。特定派遣は、派遣会社の正社員として常時雇用される形態です。そのため、登録型の一般派遣と違い、入社のときには普通の企業と同じように面接や筆記試験に合格しなければなりません。入社のハードルは若干高くなりますが、一般派遣より給与水準は高く、職がなくても1~3ヶ月は基本給が保証されます。一般派遣よりは収入面で安定しているといえます。
また、業務内容も一般派遣より高度な内容が多く、職務経歴上プラスになるため、派遣先企業やその他企業へ正社員で雇用される可能性は高くなります。ただし、正社員雇用されているため、休みの日でも会社の行事に参加する必要があるなど、一定時間拘束されてしまうデメリットはあります。
派遣で働くなら特定派遣(常用型派遣)の一択
もし、あなたが派遣会社に入ってみよう考えているなら、迷わず特定派遣を選んだほうがいいでしょう。特定派遣で雇用してくれない場合は、一般派遣や契約社員などの形態で勉強しながらスキルを身につけて、再度応募すれば大抵は雇ってもらえます。特定派遣もなんだかんだで派遣なので、面接や筆記試験はあれど、ある程度のスキルがある人なら9割以上は雇ってくれるでしょう。スキルがあれば、大工場の設計補助や機械メンテナスなど、高度技術職へのステップとなる職種に派遣されます。
特定派遣はあくまでステップアップと考える
ただし、技術系の職種に派遣されたからといって、派遣形態で仕事を何年も続けることはおすすめできません。職務経歴のプラスにはなりますが、長くても3~5年で他の企業へ正社員で転職することを考えましょう。
なぜなら、中堅以上の会社で働いている人は、中高年だと結構な割合で、一般派遣と特定派遣の区別がついていないからです。彼らからすると派遣は派遣ですから、派遣に対するレッテル貼りをする人もまだまだ多いのが現実です。ただ、面接で自分がやってきた仕事を具体的に説明することができれば、そうした先入観を薄めることはできます。
給与面に関しても、派遣先企業が派遣会社に支払う金額に依存するため、昇給はほとんど期待できません。自分がその会社でスキルアップして、またべつの会社に派遣されるとき、その会社が前の会社より高い賃金を提示したとしても、派遣会社の取り分が増えるだけで、自分にはほとんど還元されないと考えたほうがいいでしょう。
特定派遣は大手企業正社員への登竜門
特定派遣の大きなメリットとして、派遣先に大手企業が多いことがあげられます。大手企業で働くことができると、その会社の雰囲気もわかりますし、同じ業界の他の大手企業で正社員雇用される可能性も高まります。また、大手企業には多くのルールがあるため、それらのルールを知っていることがメリットになります。大手企業には設備メーカーや商社の営業など、様々な業者さんが出入りしています。その企業の複雑なルールを知っている人は、それらの業者から雇用されやすいのです。
大手企業に出入りしている業者だからといってバカにしてはいけません。本体はグローバル企業で、世界的に見ると日本の大企業より規模が大きいこともあるからです。そうでなくとも、メーカー勤務などは、大手企業より賃金水準が高いことも珍しくないのです。
もし、あなたが大手企業に派遣され、数年後に転職を考えるときは、その会社や同じ業界だけでなく、その大企業に出入りしている企業にも注目してみましょう。転職では、選択肢は複数持っておいた方が成功できる確率は高まります。もしかすると、思わぬ好待遇で迎えられることもあるかもしれません。
転職エージェントも正社員予備軍として狙う特定派遣社員
知り合いの転職エージェントと話していると、彼らも一般派遣よりは特定派遣の方が転職させやすいと言っていました。紹介する企業からすると、一般派遣だと職務経歴として見られませんが、特定派遣で技術職をしていれば、職務経歴として見てくれるからです。これは、私自身の経験からも間違いないと思います。私自身、特定派遣で4年半ほどメーカーの技術職をしていたので、その経験を買われ、一部上場企業の技術職として採用された過去があるからです。
なので、特定派遣で何年か技術を身につけ、転職エージェントに依頼して転職先の企業を探してもらうのもいいでしょう。ただ、転職エージェントを使うなら、早くても20代後半くらいからがいいと思います。ある程度、社会人としての経験値があった方が、エージェントとしても紹介しやすいからです。
特定派遣社員になりたいけど、派遣先企業の面接に落ちてしまう
特定派遣の社員になるためには、もう一つのハードルをクリアしなければなりません。特定派遣会社に採用された後、次は派遣先企業との面接が待っています。派遣先企業の面接に合格し、初めて特定派遣会社と雇用契約を結ぶことになります。
派遣先企業の面接に合格できない場合、次の3つの理由が考えられます。
身だしなみが悪い
スキルが不足している
面接官の質問に答えていない
身だしなみが悪い
これは社会人として最低限のエチケットだと思います。頭はボサボサ、スーツは皺だらけといった、だらしない印象を相手に与えるような身なりはしないことです。なんだかんだで世の中の9割の人は相手の表面しか見ていません。
デキない人でも身なりがきちんとしていれば、デキそうな人という印象を持たれます。反対にデキる人でも身なりがだらしないと、デキそうにないという印象を持たれてしまうのが現実なのです。採用される最低条件として、清潔感のある身なりはしておくようにしましょう。
スキルが不足している
派遣先企業の面接で落とされる場合、実際はこれが一番多いと思います。現場作業などであれば、未経験でも採用されやすいですが、技術職だと経験もしくは多少のスキルがないと採用されません。「では、どうすればいいのか?」というと、スキルを証明すればいいのです。実に簡単なことです。
たとえば、あなたが設計に興味があるとしましょう。設計を経験してみたいけど、自分は文系だし資格も持っていない。それでもスキルを証明することは、今の時代には十二分に可能です。
WebにフリーのCADソフトがいくらでも転がっていますから、それをダウンロードして勉強すればいいのです。そして、少しでも図面が書けるようになったら、自分で書いた図面をプリントアウトして、履歴書・職務経歴書と一緒に提出するのです。
「論より証拠」口で説明するより、書いた図面を見せれば何ができるのかは一目瞭然です。図面の表記の仕方などもルールがありますから、本を見ながらそのルールに従って自分の書いた図面に入れておくのです。そうすれば、基本的な作図スキルはあると判断されるでしょう。
プログラムについても同様です。履歴書や職務経歴書に文章で書くより、自分の作ったプログラムコード、それがどういったプログラムなのか説明した文章を印刷して提出すればいいのです。たとえあなたが文系だったとしても、それができるなら技術職として採用されるのは難しくありません。
電気・機械系の仕事に就きたい場合はどうすればいいのか? これについては、現場作業はから入り、ステップアップしていくか、第二種電気工事士のような簡単な資格を取っておけばいいでしょう。
派遣から正社員へのステップアップまとめ
最期にここまでの流れを簡単にまとめてみます。
↓
特定派遣で経験とスキルアップ(3~5年)
↓
他の企業へ転職する(正社員雇用)