客観性がすべての鍵になる

あなたは普段、客観性というものを意識しているでしょうか? もし、意識していないなら、今日からでも意識して毎日の生活を送ることをおすすめします。この客観性というものを、自分に向けられるかどうかで、あなたの人生は大きく変わってくるからです。

自分を客観的に見つめられる人が成長する

人は他人を見ているとき、客観的に見ています。それと同じで、自分のことも客観的に見ることができる人がいます。あなたが自分を成長させたいと願っているのであれば、自分を客観的に見つめるという能力は必ず必要になります。なぜなら、自分を客観的に見つめられない人に、自分の悪いところや弱い部分を修正することはできないからです。

自分を客観的に見つめられる人は、そうでない人と比べて、自分のことをより理解することができます。世の中のほとんどの人は、自分のことをよくわかっていると考えていますが、実際には自分のことすらわかっていない人のほうが多いのです。よく、「自分は何のために生きているのか?」「何をすればいいのかわからない」という人がいますが、自分のことがわかっている人は、このようなことは言わないのです。

自分がわかるということは、自分の望みがわかるということです。自分の望みがわかれば、自分がどのように生きたいのか、何がしたいのかも、おのずとわかるようになってきます。自分の望みを達成するために、何が足りないのかを考えるようになります。そして、自分に足りないものを補うための手段を探し始めるのです。

自分に足りないものを補う手段が見つかれば、その人はすぐにそれを実行するでしょう。実行すれば、自分を変えることができるからです。客観性のある人は、こうして次々と自分を成長させていきます。最近の言葉を使うなら、自分をアップデートしていくということです。それが成長するということなのです。

自分が理解できるから他人が理解できるようになる

多くの人は、自分のことをよく理解せず、他人のことばかり研究しようとします。どうすれば他人を操れるのか、どうすれば他人の心がわかるようになるのか。しかし、いくら研究しようとも、自分のことがよく理解できていない人に、他人のことは理解できないのです。

孫子の言葉に、「敵を知り己を知れば百戦あやうからず」という有名な言葉があります。この言葉は「敵を知り」が最初に来ていますが、本当は「己を知り」が最初なのです。人間というものは、どこまでいっても自分を差し置いて物事を考えることはできないものです。それはすなわち、自分を基準にして物事を考えるということです。まず自分という基準がしっかりしていなければ、他人のことなどわかるわけがないのです。

たとえば、何かの長さを測るとき、物差しを使って長さを測ります。このとき、物差しという明確な基準がなければ、物の長さを正確に測ることはできません。それと同じで、まず自分という基準をしっかり理解することが、他人を理解することのスタート地点になるのです。

自分の嫌なことがわかれば人間関係もうまくいく

私が考える人間関係の基本原則は、「自分がされて嫌なことは他人にもするな」ということです。これは、自分を客観的に見つめることで、自分がされて嫌なことを理解しているからできることです。自分のことを客観的に見ることができない人は、他人が嫌がることもよくわからないのです。

他人が嫌がることをしておきながら、相手からやりかえされると怒りだす人がいます。端から見れば「お互い様だろう」と思うのですが、怒った人は相手だけが一方的に悪く、自分は悪くないと言い張ります。このような人は、まったく自分のことがわかっていないのです。当然、人間関係もうまくいくはずがありません。

もちろん客観性だけでなく、他人に対する思いやりや想像力といった、ほかの能力も関係します。ですが、これらの能力も最初に客観性あってこそ、はじめて有効活用できるようになるのです。

自分と他人の違いを理解できれば異質な人とも付き合える

自分のことがよく理解できている人は、自分と他人の違いをよく理解できるようになります。「自分と他人が違うことなど誰でも知っている」そう考える人もいるかもしれません。ところが、現実には自分と他人が同じように物事を考えると信じている人は、かなりの割合で存在します。

先に私は、「人間は自分を基準にして物事を考える」と書きました。これは、自分と他人が同じだと考えることではなく、自分と他人の違いを理解するために必要なことなのです。

同質性の強い日本型組織の問題点

日本はよく同質性の強い社会だと言われています。閉鎖的なコミュニティ(集団)では、自分と他人が同じように考えるという人の割合が高くなります。日本の大企業などは、とくにこの傾向が強いと感じます。そして、自分と他人が同じだと考える人ほど、自分のことをよくわかっていないのです。

同質性を強制される狭いコミュニティでは、自分を知ることがかえって共同生活の妨げになるからでしょう。そのような組織では、異質な人と交流する機会もほとんどありません。そのため、自分と同じコミュニティにいる人のことしか、理解できない人間になってしまうのです。日本企業が海外進出して、あまり上手くいかないのも、異質な人間を理解できる人材が少ないのが原因だと私は考えています。

狭いコミュニティの中でだけ生活してきた人は、そのコミニュティのルールを遵守することで、そこに留まろうとします。そういう人は、自分のコミュニティのルールが絶対的な価値基準になりがちです。そのため、しばしば無意識的に自分のコミュニティのルールを相手に強制することがあります。しかし、それでは異質な人との人間関係はうまくいきません。日本人同士でもそうなのですから、海外の人たちであればなおさらでしょう。

客観性がすべての鍵になる

人が幸せを求めたり、能力を高めたり、目的を達成するためには、必ず自分を客観的に見つめる作業が必要になります。それはいうなれば、人生における基本作業といってもいいでしょう。何事も基本をおそろかにして成就することはありません。まずは、自分を知るという基本が最も大切なことなのです。

自分を客観的に見つめ、より深く自分を理解する努力をするのです。そうすることで、自分のやるべきことが次第に明確になってきます。やるべきことが明確であれば、人生に迷うことはほとんどなくなります。人生における、幸せ、満足、努力、成長、安定、それらすべての鍵は客観性にあるのです。