現代の日本人は、老いも若きも失敗を恐れる人が多すぎると思います。
日本の社会では、「失敗したくない」 何をするにしても、とにかくこのような言葉を耳にします。これは日本のサラリーマン文化が原因でしょう。とくに、些細なミスでも上司に厳しく叱責されてきたような人ほど、大したミスでもないことをミスだと考えるようになってしまうからです。
私は失敗とは、ただのデータ取りだと考えています。失敗をせずに失敗をしなくなることなど本来ありえないからです。失敗を経験するほど、自分の弱点や物事を進めるうえで注意すべき点が明確になっていくのです。
失敗をすることで注意力が高まる
失敗をすることで、最も高まる能力は注意力です。何かをするとき失敗しないためには、事前に注意すべきことを知っておく必要があります。
家電などを買うと付いている、取り扱い説明書も注意すべき点を記載したものです。注意すべき点を先に知っておくことで、機械の破損や事故を未然に防止するのです。
とはいえ、説明書ですべての注意点を網羅できるわけではありません。説明書のようなものがないこと、誰もやったことのないことをするときには、注意すべき点というのはほとんどわからないものです。
多少のことは事前に予測できるでしょうが、予測できないことの方が多いのが普通です。そんなときは、実際にことに当たってみるしかないのです。
そのとき、あなたは何らかの失敗をするでしょう。場合によっては、精神的・肉体的、あるいは金銭的に損失を被るかもしれません。ですが、そこで失敗を経験することで、あなたは注意すべき点を明確に知ることができます。
次に同じことや似たようなことをしたとき、失敗を回避できるようになります。失敗を何度も経験することで、あなたにどんどん注意力がついていくのです。
注意すべき点をたくさん知っていれば、知らない人より失敗する確率を下げることができます。あなたの行動の成功率が上がっていくのです。だから、失敗は早いうちにどんどん経験した方がいいのです。
損失を予測できるようになる
また、何度も失敗を経験することで、自分が被る損失を予測できるようになります。人は予測できないことに対して、必要以上に恐怖心を抱くものです。もしあなたが、何度も失敗を経験していれば、損失の予測が他人よりもできるようになっているはずです。
100%正確に予測することはできませんが、「これをすれば、失敗したときの損失はこれくらいだろう」といった、大まかな予測はできるようになります。そして、失敗を経験した人ほど、予測の精度も上がっていくのです。
ある程度、物事の予測ができるようになると、自分が耐えられる損失を計算できるようになります。「ここまでの損失なら自分は耐えられる」そう考えることができれば、さらに色々なことに挑戦できるようになっていきます。
そこで、たとえ失敗したとしても、最初に損失の目処が立っていますから、慌てることがなくなるのです。そして、あなたは新しい情報を得て、さらに失敗する確率を下げていくことができるのです。
失敗しないことが最大の失敗になる
このように、失敗というのは私たちに多くの貴重な情報を与えてくれます。ところが、ほとんどの日本の会社では、長年この失敗を悪いものとして毛嫌いしてきました。
その結果、大したことのない些細な失敗まで恐れる人たちばかりになってしまったのです。日本の中高年がそんな感じですから、若者がそれを見習うのは、ある意味で仕方のないことだと思います。
失敗をしないための最もよい方法は、何もしないことです。毎日、同じことばかりしていれば、失敗することはないでしょう。しかし、もうそんなことは言っていられない時代になりました。社会の流れが遅く、何十年も同じ生活が続けられた時代は終わったのです。
これからは、一つの会社に勤め続けようと思っても、いつリストラされるかわかりません。リストラ以外にも、企業買収、担当部門の閉鎖などで、自分の働く環境が大きく変わることは珍しくないのです。
去年あたりから、45歳以上のリストラが大企業中心に始まっています。彼らの多くは、長年同じ生活を続け、物事に挑戦していないため、失敗の経験がほとんどありません。今になって、社外に放り出された彼らの何割かは、恐らくこれから数多くの失敗を経験することになるでしょう。
中には、これまで経験してない失敗をすることで、精神的に立ち直れなくなる人も出てくるかもしれません。酷なことではありますが、そのような人たちにとっては、失敗してこなかったことが、人生最大の失敗ということになるのです。
若いうちに色んな失敗を経験していれば、自分の中に情報の蓄積があるので、リストラくらいで慌てることもなくなるのです。むしろ、リストラの予兆があれば、される前に次のことをすでに考えるようになっているはずです。
若いうちは、失敗することで精神的に苦しむこともあるでしょう。後悔することや悲しいこともあると思います。ですが、そんな失敗のほとんどは、自分が年を取ったとき、いい思い出や笑い話になるものです。同時に、若いころ、失敗の経験がたくさんある人のほうが、人間的にも成熟するのです。
もっと自分の思うように生きてみましょう。今どき、人生のやり直しなどいくらでもききます。失敗をすることで、他人の気持ちもわかるようになるのです。嫌なことや苦しいこと、悲しいことを何度も乗り越えることで、最後には生活も安定し、笑って毎日を送れるようになるのです。