新卒や高学歴はもはやプラチナチケットではない

「新卒はプラチナチケットだ!」「東大卒はプラチナチケットだ!」

10年ほど前までは、よくこのように言われていました。地方では、いまだにこのようなことを信じている人も少なくありません。

しかし、新卒や高学歴がいいトコ行きのプラチナチケットだと言われた時代はもう終わったのです。

そもそもこうした論調は、最初に入った組織で人生が決まるという前提のもとに成り立っています。これからの時代は、最初に入った組織に居続けられる保証などありません。

それどころか、一つの組織に居続ける人間は能力がないとみなされる時代になるのです。

すでに、日本の社会も個人が組織に面倒をみてもらう時代ではなく、自分の人生は自分で面倒をみる時代に変わりつつあります。

企業が個人の面倒をみられなくなった

2019年、経団連会長やト○タの社長が「終身雇用はもう守れない」と宣言してしまいました。

これはつまり、「これからは会社に頼らず自分の面倒は自分でみてね」ということであり、「会社はあなたたちが必要ないとみれば、これからはいつでもクビにします」と言っているのです。

2020年の現時点では、まだ従業員の権利は守られているので、すぐにクビにされることはないでしょう。

しかし、今後はいつでも従業員をクビにできるよう、法改正が進んでいくことが予想されます。そうでないと、日本の企業は生き残れないからです。

ただでさえ、日本企業の利益率は欧米諸国と比較すると低いのです。

それなのに、日本企業はこれまでずっと、仕事をしない管理職や従業員まで保護してきました。だから、これからはそうした人たちを切るという方向に舵を切ったのです。

一つの会社に長年勤めることのメリットがなくなった

私が社会に出た20年ほど前、会社に長年勤めることで様々な経験や知識が蓄積され、知恵袋のような役割を持った人がどこの職場にも一人はいました。

ところが、近年のマニュアル化やIT化で情報の蓄積が可能となり、彼らのような人たちの価値がなくなってしまったのです。

一昔前は、一つの仕事を極めるのに10年、15年はかかると言われていました。しかし、蓄積した情報の共有が可能となったことで、業務の習得期間が大幅に短縮されたのです。

私のこれまでの経験でも、どんなに難しい仕事でも5年もやれば十分だと感じます。同じ仕事を5年もやれば、一通りのことは誰でもできるようになるからです。

そうなると、「一つの会社、一つの業務に10年、20年と時間をかける必要があるのか?」という疑問が湧いてくるのが当然の流れです。

経済合理性だけを考えるなら、3~5年くらいで会社を辞めてもらい、賃金の安い人に新しく入ってもらったほうが、会社としては利益が出しやすいということになるでしょう。

もちろん、大規模なインフラ建設を請け負うゼネコンの監理職、高度な知識・経験を必要とするエンジニアなど、経験年数がものをいう一部の業界は例外となります。

ただ、サービス業や小売業、外食産業など、それほど高度なスキルが必要ない分野に関しては、一つの会社や業界で長年勤め続けることのメリットは、今後ますます薄れていくでしょう。

転職しない人の価値が低下している

私は何度も転職しているので、リアルな転職事情については、他の人より知っているという自負があります。

ここ5年くらい前から、よく聞くようになったのが、「30歳までに一度も転職してない人を取りたがらない企業が増えている」ということです。

これは、何人かの転職エージェント、いくつかの企業の人事担当者から実際に聞いた話です。理由は、「変なクセがついている」というのがおおよその内容でした。

つまり、新卒で一つの会社に30歳まで居続けていると、最初に入った会社のやりかたに固執して、次の会社のやり方になじめない人の割合が高くなるというのです。

たしかに、新しく入ってきた中途採用者が、前の職場のやり方に固執して、トラブルになっている場面を私も何度か目の当たりにしたことがあります。

何度も転職している私からすれば、「なんでそんなことができないのだろう?」と疑問に思うのですが、本人は前の会社のやり方のほうが正しいと完全に思い込んでいるのです。これでは、新しい職場になじめないのは当然のことです。

また、転職しない人というのは、保守的で新しいことに挑戦してない人というレッテルを貼られます。外資系企業やベンチャー企業では、ここはとくに敬遠される部分です。

外資系企業で一変した評価

日本企業では、これまで何度も転職している私の経歴を見られると「いつまでもフラフラして!」などと批難されたものです。

ところが、40歳を過ぎて外資系企業で面接を受けたときは、その評価が一変していました。

「転職してもキャリアはほぼ一貫している」「これだけ色々な経験をしていれば、どんな変化でも対応できるだろう」「チャレンジ精神がある」といった評価に変わったのです。

外資系企業、とくに米国の企業というのは、とにかく人生経験を重視します。

そのため、何度か転職を経験している人のほうが、「自分の人生に前向きな人」「ヤル気のある人」と判断されるのです。

個人の能力が問われる時代

これからの時代は、本当の意味で個人の能力が問われる時代になります。

学歴ではなく、「これまで何をしたのか」「何ができるのか」が重視されるのです。

そのような時代では、新卒時に入った組織など、長い人生において大した意味を持ちません。たった一つの組織で学べることなど、たかが知れているからです。

ただ単に有名企業にいたという経歴だけでは、あなた自身の価値を証明することが難しいのです。

大切なのは、組織に入ることではなく、入った組織で「あなたは何ができるのか」なのです。今や、新卒時に入った組織で人生が決まるということもありません。

最終的には、あなた自身が様々な経験を通して身につけた能力、それだけが本物のプラチナチケットになるのです。