企業の目的は利潤の追求ではない

「企業の目的は利潤の追求」

私が中学生のころ、公民の教科書にはこのように書かれていました。今の教科書がどう書かれているのかわかりませんが、恐らくは同じように書かれているのでしょう。しかし、これは少し考えればおかしいということに気づくはずです。

有名経営者にも手段と目的をはき違えさせた日本の教育

当時、家庭環境が悪かった私は、どちらかといえばひねくれていたので、先生がこのように言ったとき「なんだそれ?バカバカしい」と思いました。

そもそも企業の目的など、創業者が自由に決めていいはずです。それを何故、利潤の追求などと勝手に決められないといけないのでしょうか?

それ以前に、利潤の追求というのは手段であって目的ではないのです。利潤≒お金ということですから、お金はあくまで目的を達成するための手段であって、それ自体が目的にはなりえません。

私は今まで、こんなバカげたことを鵜呑みにする人間などいないと思っていたのですが、現実はそうではないようです。先日、Youtubeである動画を見ました。その動画は、日本なら誰でも名前を知っている会社の経営者と若手ベンチャー起業家たちが談話する動画でした。

その動画の中で、有名企業の経営者が「企業の目的は利潤の追求だ」と発言したのです。私は開いた口が塞がりませんでした。「あんなこと本当に鵜呑みにしている経営者がいるんだ・・・」と思ったからです。

有名企業の経営者ですから、もちろん高学歴です。経歴も一般人からみれば申し分ありません。そんな人でも手段と目的を混同しているのです。私はこのとき、青年期までの教育の根深さというものを感じました。

今の日本企業の経営者の大半は、サラリーマン経営者です。彼らの多くは、受験戦争を勝ち抜き、社内の出世競争を勝ち抜いてきたエリートといってもいいでしょう。

そして、今の日本のエリートの大半は、いわゆる受験秀才です。彼らは学生時代のテストで「企業の目的とは何ですか?」という問題がだされたとき、「利潤の追求」と書いて正解をもらったはずです。そのときの正解が正しいとずっと信じているのです。

「これでは日本が良くなるわけがない」、私はつくづくそう感じました。

ただ金さえ儲かればいいという考えが社会を不幸にする

今の日本では、ただ「金さえ儲かればいい」という考えが蔓延しています。たしかに、企業活動を継続するためにはお金が必要ですから、私もお金儲けをすること自体は否定しません。

ですが、ただ利潤の追求だけを目的とした組織というのは、組織で働く従業員や倫理観というものをしばしば置き去りにします。

ただ利益を上げされすればいいのなら、従業員の生活など考えず給料を上げなければいいのです。下請けなどの業者さんから利益を搾り取ればいいのです。詐欺まがいのことをすればいいのです。

今の世の中を見渡してみると、このようなことばかりではないでしょうか? 私は、これらの事象はすべて学生時代の教育に帰結するような気がしてなりません。

昔の経営者が優れていたワケ

現代でも、日本の大企業を作った創業者が称賛されることがあります。私も彼らは優れていたと感じていますが、彼らが偉かったのは、まず明確な目的があり、従業員の生活をちゃんと考えていたことです。

彼らは目的のために利潤を追求し、その目的を成就するために必要な従業員を大切にしたのです。だからこそ、その会社で働く従業員は誇りを持って仕事をすることができました。

事業をするために明確な目的があったから、従業員や下請けを犠牲にしてまで無理に利潤を追求することをしなかったのです。

目的なき現代の経営者たち

ところが、昨今の日本企業をみてみれば、利益をあげても社員に還元しない、そのくせ役員報酬は上げようとする。自社さえよければ下請けがどんなに苦しんでも知らんぷりといったことが横行しています。お金の稼ぎ方に節操というものがないのです。

このような傾向は15年くらい前がピークで、現在では多少マシになってはいます。とはいえ、同様の傾向は程度の差こそあれ、まだ続いているのです。

2020年の現在において、日本企業の内部留保は過去最高額を記録しています。それだけ内部留保があるのなら、なぜ社員に還元しないのか? なぜ開発などの投資に回さないのか? 理解に苦しみます。

結局、多くのサラリーマン経営者たちには、利益以外の明確な目的がないのでしょう。出世街道を走り続けてきた彼らですから、企業のトップにのぼりつめても、今度は株主の評価が気になるのかもしれません。

あるいは、自分たちが引退するまで大過なく過ごせればいいと考え、「金さえ貯めておけば、そのときまで乗り切れるだろう」と思っているのかもしれません。

これらはあくまで私の推測ではありますが、いくつもの会社で何人もの企業幹部や経営者をみてきた経験から、私には彼らがそう考えているようにしか思えないのです。

利益を追求するのはあくまで目的のため

以前、ホリエモンこと起業家の堀江貴文さんが「利益なんか追求しませんよ。バカじゃないんだから」とYoutubeの動画で語っていたのを見たことがあります。私も彼を手放しで称賛することはありませんが、ここに関して、彼のいうことは正しいと思います。

私も、「下流のうちはお金を追いなさい」とべつの記事で書きましたが、それは下流から脱出するためにお金を使って情報を得ることが必要だからです。つまり、「下流から脱出する」「そのための情報を得る」という目的のためにお金が必要だということです。

ここで、何の目的もなくお金だけを追うとどうなるでしょうか? かりに、大金が転がり込んだとしても、ただ贅沢ばかりして散財することになるでしょう。

日本でも、大金を稼いだ人が称賛されることがよくありますが、彼らの大半は自分の贅沢を他人に見せつけるだけで終わりです。お金を持っていることを大勢に見せつけることで、人を集めてさらなる金儲けに走るだけなのです。

今の日本の金持ちには、このようなつまらないタイプが非常に多いと思います。私はこのような人たちを見るにつけ、「彼らには本当にやりたいことがないんだろうな」と感じています。

ホリエモンもよく批判されていますが、彼は宇宙事業という明確な目的があるだけ、他の金持ち連中よりマシだと思っています。少なくとも、宇宙事業への投資は、未来の社会貢献へと繋がるからです。

もし、あなたが「お金が欲しい」と強く望んでいるのなら、まずは「なぜお金が必要なのか」についてよく考えてみましょう。目的がなく利益を追求しているうちは、人は幸せにはなれないからです。目的なき利潤の追求は、結局のところ自分も他人も幸せにはしないのです。