苦手を克服したほうが自信になる

あなたは苦手なことを克服したことがあるでしょうか?

今、日本では多くの有名人や知識人がそろって「得意なことだけをやりなさい」と言っています。短所を治したり、苦手なことなどする必要はないですよということなのでしょう。

そのためか、最近では多くの人が自分の苦手なことを避け、得意なことばかりしようとしています。本当にこれでいいのでしょうか?

得意なことばかりしている人ほど自信がない

自分の得意分野を伸ばすことは大切なことですが、ある程度のレベルになると、そこを超えるために必ず苦手なことを克服する必要がでてきます。そこで苦手を克服できなければ、ずっと同じレベルで足踏みすることになるのです。

自分の得意なことだけをするということは、言い換えれば楽なことばかりするということです。楽なことばかりしていては、人は成長できません。人が成長するためには、今のレベルより高い負荷が必要なのです。

なにより、自分が得意なことばかりしている人には本物の自信というものがつきません。自分がやりやすいことばかりしているのですから、何かの困難に直面したとき、すぐに諦めてしまうのです。

私もかれこれ20年以上サラリーマンをしていますが、どこの会社でも特定分野に特化した人が必ず1人はいます。しかし、彼らに自信があるのかといえば、私にはそうは見えませんでした。

狭い分野に関してはプロフェッショナルでも、それ以外はからっきしという状態では自信など持ちようがないのです。

特定分野に限定された専門職の価値は年々低下している

そもそも、「苦手なことなどしなくてもいい」というのは、自分のことが一通りできるようになってからの話です。このような甘い言葉は、ほとんどの場合、苦手なことをしたくない人の言い訳に使われています。

日本のサラリーマンの場合、得意な業務が非常に狭い範囲に限定されることが多いので、そこだけやっていては今後は通用しなくなるでしょう。会社の業務自体が高度化、複雑化してきているので、狭い範囲のことだけ得意な人は必要とされなくなってきているからです。

同時に、特定業務に特化した専門職の賃金も年々下がってきているのが現状なのです。得意分野のほか、2~3つは平均以上の能力を持っている人のほうが、昨今の現場では重宝されるのです。

日本はこれまで、業務を細分化し、専門分野に特化した人材を育ててきました。ところが、人口減少や業務の高度化で、ここにきて揺り戻しがあるように思います。

以前は、1つの業務を1人が専門職として担当していました。それが今や、複数の業務を1人でこなさないといけなくなってきているのです。

そういう業務の進め方になると、「これしかできません」という人は、もはや必要とされなくなるのです。

苦手を克服したほうが自信になる

複数の業務をこなさないといけなくなると、必然的に苦手なこともする必要がでてきます。頭の切り替えができない人は嫌がるでしょうが、世の中の流れがそうなっているのでどうしようもありません。

ここは一つ、この変化をチャンスととらえて苦手を克服することを考えたほうがいいでしょう。

苦手な分野に手をつけると、最初のうちはうまくできなかったり、全然理解できなかったりします。しかし、そこを乗り越えて苦手が徐々に克服できると、あなたにとって大きな自信となります。

「自分はできないと思っていたけどデキた!」
この想いがあなたの成功体験となって、一つの自信となるのです。

また、苦手なことを克服することは、ほかにもメリットがあります。苦手分野を克服する過程で、あなたは様々な努力や工夫をすることになるでしょう。うまくいかなければ、手を変え品を変え、いろいろ試す必要がでてきます。

そうして苦心した経験というのは、べつのことで必ず役立つことになります。苦手を克服する(物事を達成する)という経験は、すればするほどべつの分野に応用がきくようになるのです。

応用力の高い人というのは、どんな状況でも結果を出すことができます。それは、どんな状況に面しても、焦らず落ち着いて対処できるということにもなります。

その余裕ある態度は、周囲の人たちの目には揺るぎない自信として映ることでしょう。もちろん、自分自身も「自分ならこの状況を突破できる」と考えることができるようになっているはずです。

私は、35歳くらいまでは、苦手なことを克服する経験をたくさんしたほうがいいと考えています。そのほうが、自分に自信もつきますし、中年以降、苦手なことをしなくてはならない状況に陥っても、状況を打破できるからです。

ここ最近、コロナ禍にあって中年社員のITオンチがよく取り上げられています。業務に必要なことでも、自分が苦手だからといって覚えようとしない。新しく導入されたハードやソフトにまったく適応できない。

彼らは、若いうちに苦手を克服してこなかった人のなれの果てなのです。彼らに自信があるように見えるでしょうか? 自信どころか、社内での価値さえも急激に低下しているはずです。

今の時代は物事がめまぐるしく変化する時代です。自分が苦手だろうと何だろうと、手をつけなければいけない状況に遭遇する機会が今後ますます増えてくるでしょう。

だからこそ、苦手を克服するという経験を、若いうちに1つでも多く経験しておく必要があるのです。そうした経験をすることで、自分に本物の自信がつき、困難も突破できる力量が身につくのです。