膨大な情報に簡単にアクセスできるようになった現代、学歴の価値は20年前と比べて明らかに低下しています。
それでもなお、今の親御さんたちは子供を幼いころから塾に通わせ、お受験だなんだと、その盛り上がりはおさまる気配がありません。多くの親御さん、とくに40代以上の親御さんの学歴信仰はいまだ根強いものがあるようです。
しかし、小学校や幼稚園から塾や私立の学校に多額のお金を投入して、これから10年、20年後に以前と同様の見返りがあるのかといえば、私には同じ見返りがあるとは思えないのです。
学歴を信仰する親御さんの多くは、自分たちが若いころの成功法則を今後も通用すると信じているのかもしれません。
なぜ高学歴が必要だったのか?
そもそも、これまではなぜ学歴が必要だったのでしょうか? 一言でいえば、日本がサラリーマン社会になっていたからだと思います。
サラリーマン社会では、人材を見極めるための基準が必要です。世の中の9割の人たちは、見えるものでしか物事の判断ができませんから、学歴という明確な基準が欲しかったのでしょう。
待遇がよい企業には応募者が殺到しますから、そうした企業は学歴条件のレベルを引き上げることで、応募枠の調整をしようとします。そのため、高学歴ほど待遇のよい会社に入ることができるようになっていったのです。
それが定着することで、”高学歴=待遇のよい企業 (職業)” という図式ができあがります。そのため、かつては高学歴であるほど、ほとんどのケースで高収入が保証されていたのです。
人生において、お金があるということは高い幸福度にも繋がります。自分の子供の将来を考え、高学歴を求めるというのは、昭和~平成初期にかけては、時代に見合った戦略だったといえるでしょう。
学問の本来の目的と受験勉強
ただ、高学歴を求める人が増えれば増えるほど、競争は激化します。いきすぎた競争は、やがてテストで高い点を取ることが目的となっていきます。
学問の本来の目的というのは、自分で物事を考え、現実社会を生きる力を養うためのものです。ところが、昨今の受験中心の勉強では、テストで高得点をとるテクニックばかりが重視され、学問の本来の目的から大きくはずれてしまいました。
そのため、現実で使える応用力、創造力が大きく阻害されているのです。子供のころからいくつも塾に通わされ、勉強ばかりでまともな人づきあいをしていない人などは、相手の気持ちを推し量る想像力すら育っていません。
このような、人としてのバランスを欠いた人材を生み出す教育は明らかに間違っています。そのような人たちが中心となっているから、今の日本社会は不安定になっているのです。
高学歴の人たちは日本を豊かにしたのか?
それは、今の日本を見渡してみればわかります。政治家、官僚、大企業の幹部、彼らはみんな高学歴の人たちです。今の日本は彼らのような高学歴の人たちが中心となって動いています。
ですが、私たちはそれで豊かになれたのでしょうか?
一見すると、物質的には豊かになったように見えますが、かたや苦しい生活を強いられている人は増加の一途にあります。
なぜなら、ここ20年、日本人の平均年収は下がり続けているからです。その割には、税金は上がり続け、日本人の可処分所得(手取り収入)は下がるばかり。これでは、国民の不満が高まるのは当然のことでしょう。
そうした社会不安が、昨今の猟奇的事件、SNSの不幸な事件にも繋がっているのです。こうしたところを鑑みても、高学歴の人たちが、いかに私たちを豊かにできないのかがわかります。
戦後、国民を最も豊かにした政治家は、田中角栄ですが、彼の学歴は制度上、中学校卒程度です。16歳のときに、工業系の専門学校(夜学)に通っていますが、大学には行っていません。
控えめにいっても、工業高校卒ていどの学力レベルである田中角栄が、国民を豊かにできたのです。もし、学歴が本当に価値あるものであれば、高学歴の人たちが国民を豊かにできない理由などありません。
しかし現実は、高学歴の人たちの考えた政策が、国民を貧乏にし、社会不安をますます増大させているのです。
学歴よりも現実で役立つ情報を求めよ
ここまでの内容を考えてみると、私には学歴など必要ないとしか思えないのです。少なくとも、現行の制度では、いくら高学歴でも今後は役に立ちません。
それなら、受験勉強に使う労力を、実社会で役立つ情報を集めるために使ったほうがよいと思います。今、ネット上には良質な情報が山ほどあるのです。学校に通わなくても、オンラインで様々なことを学ぶことができます。
学校にいる時間、受験勉強に使う時間、それらを現実的な情報を得るために使えば、社会に出るまでに十分なお金を稼げるようになっているでしょう。
実際、すでに中学生で月何百万も稼いだり、高校生で起業する若者もでてきています。今後、その傾向がますます加速することは間違いありません。
とはいえ、学歴を求めないとはいっても、最低限、情報を理解するための言語能力は必要です。
私が親なら、自分の子供には、まず漫画からはじめ、本を読ませて言語能力を高めます。ある程度の言語能力が育ったら、パソコンを買い与え、自分でネットサーフィンして情報を収集する方法を教えます。そして、収集した情報は、実際に自分で試したりアウトプットするように教育します。
それができれば、あとは自分でいろいろと試していくでしょう。わからない部分は、少し手助けしてやれば、自分でどんどん物事を覚えていくはずです。もちろん、そのための環境を作ってやらなければなりません。
もし、子供が高校くらいまでに自力でお金を稼げるようになっていたら、大学にも行く必要はありませんし、サラリーマンをする必要もありません。お金さえあれば、あとは自分の好きなように生きられるのです。
恐らく、そう遠くない未来には、それがスタンダードな生き方になるでしょう。そのころになると、もう大学というもの自体がなくなっているかもしれません。
学歴信仰は、すでに時代遅れになりつつあるのです。