最近、20代の若者と仕事をしていて思うことがあります。それは何かというと、自分の好きなこと、得意なことしか進んでやろうとしない人が結構いるということです。
近頃は「得意なことだけ伸ばせばいい」といったことがさかんに言われますが、私はこの論調は間違っていると思います。好きなこと、得意なことしかやれない人は、結局のところ何もできないのと同じだからです。
若いうちは実務能力を伸ばすことを考える
私たちのほとんどは、社会にでたときサラリーマンからスタートすると思います。社会に出たばかりのころは、働くというのがどういうことか、どんな能力があればいいのかもわかりません。
そのため、会社で働き始めて3~5年くらいは、色々なことを経験して実務能力を高める必要があります。選り好みをせずに、色々なことを経験していくうち、自分の本当の適正や得意な分野もわかってくるようになるのです。
とくに20代前半は、学生時代までの経験で自分の得意なことや好きなことを固定して考えています。そのため、自分が考えている分野が非常に狭い範囲に限定されているのです。
世の中には、私たちが考える以上に様々な業務や職種があります。若いうちから、自分で範囲を限定してしまうと、そのことに気づけないのです。
私が20代のころにも、たいして社会経験がないのに仕事を選り好みしている人がいました。しかし、そんな人が仕事ができるようになった例を私は知りません。
35歳くらいまでは、何でも選り好みせず一生懸命やってきた人のほうが、今になって本物の人材になっている人が多いように思います。
得意なことだけできる環境は存在しない
無責任な論者は「得意なことだけ伸ばせばいい」といいますが、少なくとも、サラリーマンをしていれば本当に得意なことだけできる環境などないということに気づくでしょう。
もし、会社組織で自分が得意なことだけしかしないと、必ず同僚や先輩にしわ寄せがいくことになります。そんなことをしていれば、周囲から嫌われることは誰でもわかることです。
いや、一人で起業した場合でもそうでしょう。すべてを一人でやらなければいけないため、どうしても嫌なこともする必要がでてきます。嫌なことだからといって、何もしなければ業務が立ちゆかないからです。
だからこそ、若いうちからどんなことでも経験しておく必要があるのです。人間は、一度経験すると次からは行動することに抵抗がなくなります。たとえそれが嫌なことであっても、「とりあえず片付けておくか」という気になるのです。
狭い範囲のことしかできない人より、広い範囲のことができる人のほうが、人としての汎用性があります。汎用性のある人は、歳をとっても仕事に困りません。
まずは広い範囲のことを無難にこなせるようにしておいて、その中から自分の好きな分野を選択して伸ばしていけばいいのです。
得意なことだけ伸ばすより得意なことを増やす
「得意なことだけを伸ばす」というと、ほとんどの人は1つか2つのことを想像するでしょう。しかし、実際に1つか2つの得意分野でやっていけるのは、プロスポーツ選手など一部の限られた職業だけです。
彼らのようなプロは、それで一生食べていけるだけの大金が稼げるからいいでしょう。ところが、私たちのようなサラリーマンは、特定分野の業務だけやって大金が稼げることはまずありません。一人で起業するにしても同じことです。
ですから、得意な分野を増やしておいて、それらを組み合わせたほうが、私たち一般人は成功しやすいのです。また、色々な分野を経験しておくことで、発想が広がり、他人が思いつかないアイデアが出てくるようになります。
色々なことができるということは、発想だけでなく、様々な状況に対応できる力にもなります。どんな状況に置かれても、それなりの対応が取れるということは、周囲からも頼りにされるということです。それはすなわち、あなたがデキる人であるということの証明なのです。
若いうちから、色々なことを経験して、できることを増やしておきましょう。そうすることで、自分がまだ気づいていない能力に気づくことにもなるのです。
得意なことを増やすということは、色々なことに挑戦することです。挑戦しなければ、自分の気づかなかった能力に気づくことはできません。そういう意味では、得意なことを増やすことは自分を知るための作業と言ってもいいでしょう。
得意分野を増やして汎用性のある人間になれば、会社の評価やリストラに怯えることもなくなります。仕事などいくらでも見つけることができますし、自分で仕事を創りだすこともできるのです。そして、そうした人材こそがこれからの時代に求められる人材なのです。