大企業や公務員が安定しているという幻想

日本では、いまだに「大企業や公務員が安定している」という考えが根強いようです。とくに地方では、そうした親方日の丸主義が依然として力を持っている現状があります。

情報感度の高い人たちは、もうわかっているでしょう。すでに大企業や公務員が安定しているという信仰が崩れ始めているということを。

今回は、私自身が大企業に勤めた経験や、身の回りで起こっている変化を例にあげてみようと思います。

大企業は本当に安定しているのか?

何をもって安定とするのか? それは人によって違うと思います。ただ、一般的に大企業に入りたい人の考えとしては、「給料が中小企業より高く、倒産することがない」といったところではないでしょうか。

実のところ、私も20代のころまでは、大企業が安定していると思い込んでいました。そして、自分が運良く大企業に入れたときは喜んだものです。しかし、いざ入って内情を見てみると、さほど安定しているようには見えませんでした。

給与は思ったほど高くありませんし、仕事内容も細分化されすぎて、あまり潰しがききません。なにより、私が入った業界は景気変動が激しすぎて、業績がなかなか安定していませんでした。当然、ボーナスは削られます。

たしかに、従業員数人の零細企業に比べれば、大企業は安定しているといえるでしょう。給料の未払いリスクもほとんどないですし、倒産のリスクも中小企業より少ないと思います。

ところが、2019年にとうとう日本の大企業も社員をリストラできる方向に舵を切りました。たとえ会社が倒産しなくとも、自分たちが職を失うリスクが高まってきたのです。

私の前職で、リストラを経験した54歳の男性がいました。彼は、日本でも名門と言われたP社の元社員だったのです。その人は、家を買って5年目にリストラされたそうです。家のローンが2000万残っているにもかかわらず。

恐らく、この人は定年まではP社に勤められると考えていたのでしょう。その考えは見事に打ち砕かれたワケです。非常に気の毒な話ですが、今後、このようなケースはますます増えていくでしょう。

大企業というのは、中小企業に比べて、人を大量に雇用しているため、いざ業績が低迷するとリストラせざるを得ないのです。ある意味、中小企業よりリストラのリスクは高いといえるのです。

このような現状を鑑みれば、大企業が必ずしも安定しているとは言えないと私は思います。

公務員も安定しているとはいえない理由

公務員についても、もはや安定しているとはいえない状況になってきています。私の知り合いに、地元で公務員をしている人が何人かいます。そのうちの大半は臨時職員ですが。

昨今、公務員の大半は臨時職員で構成されています。臨時職員は給料が低く、一人では到底自活ができません。ですから、臨時職員の人たちは皆、実家住まいをしなければならないのが現状です。

一昔前は、それでも臨時で10年も我慢すれば、正職員となってそこそこの給料がもらえました。ところが、近年は10年、15年と臨時で勤めても、正職員になることができなくなっているのです。それなら、臨時で働く意味がないというものでしょう。

かといって、正職員なら安定しているかといえば、必ずしもそうではないと思います。私の姉の旦那さんは、正職員で市役所に勤めています。この旦那さんは、10年以上臨時職員として勤め、35歳くらいにやっと正職員になった人です。

一時は、残業の多い部署に配属されたこともあり、年収が800万を超えていた時期もありました。その後、部職が変わったり、役職がついたことで残業代がつけられなくなり、今では年収が450万程度まで落ち込んでいます。

これは、昨今の公務員に対する風当たりの強さも関係しています。「公務員の給料を下げろ!」と多くの国民から要請があったため、公務員の給料も削減の方向に向かっているのです。

また、公務員は民間企業と比べて、賞罰に対して非常に厳格です。ちょっとの交通違反でも、懲戒免職になります。場合によっては、懲戒解雇となり、職を失うリスクもあるのです。

転職の際も、世間の風当たりは厳しいようです。

昔、私が勤めていた会社では、元公務員は採用しないとハッキリ言っていました。理由は、「使い物になる人が少ない」ということでした。その後、いくつかの他の会社でも似たようなことを聞いたことがあります。これは、公務員に対する世間一般の嫉妬もあるように思います。

公務員でもデキる人はデキるのですが、世間一般でそうしたイメージが一度定着すると、転職が難しくなるのは確かでしょう。こうしたことを目の当たりにすると、公務員もさほど安定しているとはいえないような気がします。

真の安定は自分で作り出すもの

私がここで何を言いたいのかといえば、「真の安定とは大企業や公務員といった組織に依存することではない」ということです。

本当に安定しているというのは、今勤めている会社が倒産しようがリストラされようが、自分の生活を維持できることです。それは、自分自身に組織に頼らない力量がないとできないことです。

そうした力量を身につけるためには、会社が倒産したり、リストラされたりすることを想定しておかなければなりません。そして、実際に自分がそのような不幸に見舞われたとき、どうするかを考え、事前に準備をしておく必要があるのです。

私は、自分が派遣社員をしていたとき、雇い止めにあったときのことを常に考えていました。仮に、その会社にいられなくなったとしても、2~3つはどんな働き方をするのか考えていたのです。

ですから、若いうちからスキルアップすることを考え、資格も取得するようにしてきました。そのおかげで、自分が会社を辞めても、すぐに次の仕事を見つけられるようになったのです。

それは最悪の事態を想定し、準備していたから可能になったことです。たしかに、一時的に収入が下がることもありました。それでも、最終的には過去最高額の年収を手に入れることができたのです。

私がもし、何の努力もせず、ただ転職を繰り返しただけなら、今でも年収300万のままだったでしょう。結婚もできなかったと思います。

今、コロナ禍で希望退職や雇い止めが、あらゆる業界で加速しています。あらかじめ先を読んで、準備していた人たちは次の職にありつくことができたでしょう。そうでない人たちは、生活にかなり困っていると思います。そういう意味では、コロナで労働者は完全に二極化したはずです。

私たちの親世代は、今でも大企業や公務員は安定していると信じています。彼らはそういう時代しか知らないので仕方がないのです。今、私たちが生きている時代はそうではありません。私たちは、そろそろ組織に依存するという考えを改める時期に来ているのです。

本物の安定とは、自分の能力で作り出すものであって、組織に依存することではないのです。そこを間違えると、天国から地獄に一気に転落することになりかねません。

いくら組織にしがみついたところで、切られるときは切られるのです。そこを理解したうえで、私たちは自分の能力を高める方向にシフトする時代になっているということです。