感性はどう磨けばいいのか

「感性は創造性の基礎となる」といわれます。

しかし、この感性がどういったものか定義している人はあまりいません。私も過去に色々と調べてみたのですが、感性について具体的な内容を説明している本、具体的に説明できる人はいませんでした。(私が見つけられなかっただけかもしれませんが)

「感性とは何か?」という問いに答えを出すのに、私は数年の時間がかかかりました。そして、38歳くらいのとき、ふとその答えがわかったのです。

感性の正体

そもそも、今の社会では感性という言葉が具体性を持たないまま一人歩きしています。「感性とはいうけれど、感性って結局なに?」といわれると、ほとんどの人は答えられません。ここをまず具体的に知らないと、感性を磨こうにも磨きようがないのです。

では感性とは一体何なのでしょうか?

簡単にいえば、感性とは気づく力です。感性の高い人たちは、同じものを見聞きしても、普通の人たちより多くのことを感じ取ることができます。この感じ取るというのは、言い方を変えれば ”それに気づく” ということです。

そして、その気づく力の元となるのは、感情感覚です。

日本の漢字というものは、本当に感心するくらいよくできています。感性・感情・感覚、3つの全てに「感」という漢字がついています。これはすなわち、同じ要素が含まれると考えることができるのです。

たしかに、私のこれまでの人生で会ってきた人たちを振り返ってみても、感性の乏しい人たちは、感情や感覚が鈍い印象がありました。考えてみれば、これは至極当然の話です。

感覚が鈍いということは、同じ体験をしても他の人より気づきが少ないということです。

人間というのは、基本的に自分が体験したことのない領域は想像できません。つまり、気づきが少ない状態では、想像力が高まることはないということです。

感情と感覚

感情といえば喜怒哀楽ですが、実はそれだけではありません。嫉妬、驚き、焦り、といった感情もあるのです。加えて、感情には深さもあります。一言に怒りといっても、浅い怒りと深い怒りがあることは誰にでもわかるでしょう。

自分自身が、そうした様々な感情の深さを経験しているほど、その人は他人の感情により深く同調し、気づくことができるようになるのです。

感覚についても似たようなことがいえます。人間の感覚といえば代表的なものに五感があります。これらの感覚は、深さというより幅があるといった方が適切かもしれません。感情の深さに対して、感覚は広範囲の種類があるということです。

たとえば、物を手で握ったときの感覚は、その握り具合、握った物の材質によって変わります。その他にも、自分の身体の外側にも感覚は向けることができます。人が2~3m先にいれば、目で見なくても気づける人はいるでしょう。車の運転も、自分の身体の外まで感覚を広げないと、安全に運転することはできません。

また、感情や感覚の鋭さというのは、個人差があります。生まれたときから感覚が鋭い人もいれば、後天的に強い感覚を身につける人もいます。

どちらかといえば、五感といった感覚の強さは先天的な要素が強いと思います。それでも、訓練次第で一定の水準までは、誰にでも高めることが可能です。感情の強さについては、後天的な要素が強く、人生経験次第でかなりの水準まで高めることができるでしょう。

感性を磨くとは多くの経験を積むこと

ですから、あなたがもし人並み以上の感性を身につけたいと望んでいるなら、人並み以上の経験を積まなければなりません。少なくとも、周囲の人とは違った経験を数多く積む必要があります。

そうすることで、周囲の人たちとは違った感覚や感情を体験することができます。それが、あなたの感性を高めることになるのです。

「感性を磨くには、絵画の展覧会やコンサートに行くといい」とはよくいわれることです。これも感性を高めるための一つの手段です。

色々な絵画を見ることで、普段は感じない感情が湧き起こることがあります。コンサートにいけば、CDやMP4では聴けない音域の音を聴くことができるといわれています。

私がオススメするのは、五感をフルに使うような体験をすることです。

五感をフルに使う基本は、やはり全身を使った運動です。サッカーや野球などのスポーツ、サーフィンやボルダリングをするのもいいでしょう。

感性を得意分野に特化させる

感性を高めるためには、より幅広い経験が必要になりますが、全体的に鍛えたら、あとは自分の高めたい部分を集中して体験していくのもいいと思います。そうすることで、自分の得意分野に特化することができます。

音楽であれば、最初は選り好みせず色んなジャンルの曲を聴きます。一通りそれが終わったら、今度は何ヶ月か自分の好きなジャンルの曲だけを集中的に聴くようにします。

これはどういうことかというと、まず広範囲に音のパターンを認識できるようにしておくということです。広範囲の音を認識できるようにしたうえで、自分の好きな曲に集中することで、同じジャンルの曲しか聴かなかったときよりも、より多くの音に気づくことができるようになるのです。

もちろん、感性の基礎は感覚と感情ですから、それらの感性が鈍らないよう、定期的に全身を使った運動をしたり、いつもとは違った体験をするというメンテナンスは必要になります。

鋭すぎる感性は自らを傷つける刃となる

感性が強いというと、そのメリットばかりに気を取られがちですが、ここで感性のデメリットについても語っておかなければなりません。感性が強いということは、普通の人より多くのことに気づいてしまうということです。

その気づきが良いことばかりなら問題はないのですが、私たちの住む社会には、良いこと以上に悪いことも存在します。感性の強い人というのは、そうした悪いこと、とくに負の感情に気づきやすいのです。そのため、普通の人よりストレスの多い生活を余儀なくされることになります。

とくに人間の負の感情というのは、影響を受けやすいので、かなりの精神的ストレスになります。実際、それが嫌で引きこもりになったり、ノイローゼになったりする人はかなりの数います。

感性が強そうな人で誰もが思い浮かべるのは、元アップルのCEO 故スティーブ・ジョブズでしょう。彼はかなり神経質な性格だったようで、一部では偏執狂とさえ呼ばれていました。

ジョブズが他界した後、「これからの時代は偏執狂でないと生き残れない」といったキャッチコピーを目にしたことがあります。それを見た私は、いやいや、偏執狂は短命なんだよと思いました。

偏執狂というのは、いうなれば自分の強みに極端に特化しているということです。

自分の強みに特化するのは悪いことではありませんが、極端に自分の強みだけ伸ばしすぎると、しばしば、精神の成長が感性の強さに追いつかないということが起こります。

精神力というのは、自分をコントロールする司令塔の役割を果たしますから、その司令塔が未熟だと感性をコントロールできないのです。

精神力が感性という刃の鞘になる

感性の強さに精神の強さがともなっていないと、細かいことばかり気にしてイライラします。

精神力があれば、そのイライラを抑えることができるのですが、精神力が弱いとイライラを抑えることができません。その結果、ヒステリックになったり、被害妄想ばかりが強くなってしまいやいのです。

ときどき、サラリーマンをしていてもそのような人は見受けられます。

仕事の能力が高く、ものすごく細かいことに気づく反面、どうでもいい細かいことを気にして怒ったり文句を言ったりします。そうして、自らストレスを抱えていくのです。

こういう人は、精神が未熟だと感じることがよくあります。

怒ったり文句を言っても、仕方がないことがわからないのです。そして、何歳になってもそこから抜け出すことができません。当然、周囲の人からは敬遠されることになります。それでは宝の持ち腐れというものでしょう。

今の日本では、精神を成長させるということがあまり重要視されません。

そのためか、自分の感性に振り回されている人がかなりいると感じます。たしかに、感性を高めることは大切なことですが、それをコントロールするのは精神だということを、私たちは忘れてはいけないのです。

最低限、悪い気づきをスルーしたり、意図的に感じないようにしたりといった、ストレスコントロールができるようにはしておいた方がいいでしょう。さもないと、感性という刃によって自身が傷つくことになってしまうのです。

鞘のない抜き身の刀をずっと持っていれば、自らが傷つくことは誰にでもわかります。そこに精神力という鞘があれば、自分は傷つくことなく刀を納めておくことができるのです。

せっかく高めた感性なら、誰だって自分の人生が良くなるよう活用したいと考えているはずです。ならば、感性を高めながら、自分の精神力も同時に高めていくことも意識しなければなりません。それができて、始めて私たちは自分の感性を良い方向に活かせるようになるのです。

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