あなたは ”体育会系” という言葉を聞いたことがあるでしょうか?
私が若い頃、日本社会は体育会系の企業に席巻されていると言っても過言ではない状況でした。当時は、どこの会社でも「仕事は気合いと根性だ!」などと言われたものです。会社によっては、体育会系のやり方を軍隊式と呼んだりします。
今の若い人たちは信じられないかもしれませんが、体育会系といえば、当時は良いイメージがあったのです。そればかりか、体育会系であることを、誇りにしている経営者までいました。
今現在、体育会系という言葉は死語になりつつあります。とはいえ、まだまだ一部の業界では体育会系でやっている会社があるのも事実でしょう。
しかし、これからの時代、体育会系の仕事のやり方で結果がついてくるとは到底思えません。気合いと根性もときには必要ですが、もはやそれだけで結果が出る時代ではないのです。
体育会系3つの特徴と弊害
最初に、体育会系の会社でよくみられる特徴を3つほど挙げてみましょう。
根拠のない精神論
過酷な社内競争
体育会系といっても、色々と分類はできるかと思いますが、大雑把にくくればこの3つに集約されるのではないでしょうか?
正直なところ、私はこういうのが大嫌いです。ですが、一部では体育会系が有効な場面があることも否定はできないと思います。
厳格な上下関係
体育会系を標榜している会社では、100%といっていいくらい厳格な上下関係が敷かれます。上司や先輩の言うことは絶対、意見や口答えなどもってのほか、といった具合です。
会社によっては、社長が神とでもいわんばかりの教育をされるところもあります。なんというか、社内に一種の宗教感が漂っている印象がありました。
こうした厳格な上下関係が敷かれるのは、一般的にはブラック企業で、親族経営や体質が古い企業によく見られます。
このような会社では、意見や口答えをすると、上司や先輩からボロクソに批難されます。それがたとえ、どんなに正しいことであってもです。体育会系のノリが強い会社では、上司や先輩の言うことこそが絶対的に正しいのです。
これは、下の人間は自分の意見を持つことを許されないということです。
そんな会社に何年も勤めていると、その人は次第に自分で物事を考えなくなっていきます。そして、気がつけば、ただ上司や先輩のいうことをなんでも聞くロボットのようになってしまうのです。
自ら考えることができない人間は、これからの時代に必要とされません。ですから、厳格な上下関係を敷かれるような会社は、できるだけ早めに離れるべきなのです。
根拠のない精神論
体育会系の会社では、「気合い」や「根性」といった言葉が好まれます。売り上げが悪い、生産性が上がらない、なら「お前ら気合い入れろ!」とやるわけです。
私もこれまで、何社かそのような会社を経験しましたが、気合いや根性だけで、売り上げが上がったり、生産性が高まったりした例は一つもありませんでした。
これが、高度経済成長期やバブル時代なら通用したでしょう。日本全体が裕福だった時代ですから、一人一人に今より金銭的な余裕がありました。多少無駄遣いになったとしても、さほど痛手にはならないため財布の紐が緩かったのです。
ところが、この30年サラリーマンの給与は下がり続け、ほとんどの人には以前ほどの金銭的余裕がありません。だからこそ、どこの会社も手を替え品を替え、知恵を振り絞って利益を出そうと躍起になっているのです。
そんな時代に、「お前ら気合いだ根性だ!」とやったところで結果がついてくるわけがないのです。こうした精神論の何がダメなのかといえば、言っていることに根拠がなく、具体性にも乏しいということです。
「気合いを入れたらなぜ売り上げがあがるのか?」「根性で生産性をどう上げるのか?」こう質問されて答えられる人はまずいません。言っている上司本人でさえ、「俺らはそれでやってきた」などと意味不明な回答しかできないのです。
言っている本人に具体的な説明ができないのに、下の人間に理解を求めること自体、無理があります。そんなことで結果が出るなら、どんな会社でも売り上げ絶好調です。しかし、実際は気合いや根性だけで成果が上がっている会社など、ほぼ無いというのが現実です。
それはつまり、根拠なき精神論を振りかざすことは無意味だということの証左なのです。事実、精神論を振りかざす人ほど、物事を考える力がありません。だから、精神論に逃げて自分の無策を誤魔化しているというのが実体なのです。
過酷な社内競争
体育会系の会社では、社員同士の競争を煽っているところも少なくありません。「アイツはお前よりよくやっている」などと、ことあるごとに他の同僚と比較され、競争心を焚きつけられるのです。そのため、しばしば社内の人間関係がギスギスしています。
出世競争も激しく、社員同士の足の引っ張り合い、いがみ合いが頻繁に見られます。ことあるごとに、同僚と比較され追い立てられるわけですから、落ち着いて仕事もできません。
そうして、社員同士を競わせ、目の前の競争に集中させることで、他のことを考えられなくしているのです。恐らく、会社側は意図的にそれをやっているはずです。
これはいうなれば、目の前にニンジンをぶら下げられた馬のようなものです。目の前のニンジンに目を奪われ、それを必死に追いかける。実は周囲にもっと大きなニンジンが転がっているのに、それに気づかない。
このような会社では、社員たちはどこまでも踊らされ利用される運命にあります。そして、利用価値がないと判断されればあっさりと捨てられるのです。
体育会系が有効なケース
ここまで、体育会系の会社に見られる3つの特徴について解説してきました。私は体育会系が嫌いなので、否定的に書いてはいますが、実のところ体育会系が有効なケースというのも存在します。
では、体育会系が有効なケースとはどんなケースでしょうか? 以下に特徴を挙げてみましょう。
甘い顔をするとナメてくる社員が多い
言われてもなかなかやろうとしない社員が多い
結局、世の中にはいろんなタイプの人がいますから、自分にそれが合うなら問題はないということになります。ただ、自分は体育会系のやり方は合わないと感じるなら、そういう会社は選ばない方が無難です。
自分で考えて行動ができる人
クリエイティブな仕事がしたい人
過干渉が嫌な人
には体育会系の会社は向いていないと思います。