上手い逃げ方、下手な逃げ方

「お前は逃げるのか!」

こう言われると、ほとんどの日本人は良心に呵責を覚えます。逃げることは悪いことだと考えているからでしょう。しかし、逃げることはそんなに悪いことなのでしょうか?

一言で逃げるといっても、様々な状況があります。逃げた方が良い状況もあれば、逃げてはならない状況もあるのです。

その判断をせず、ただ ”逃げる=悪いこと” と安易に判断するのは間違っています。

日本人は逃げることに対して、否定的なイメージを持つ人が多いためか、逃げ方が下手な人が目立ちます。実は逃げ方にも上手い下手があるのです。上手い逃げ方をすると状況は好転し、下手な逃げ方をすると、状況は悪化してしまうのです。

今回は、どんな逃げ方が上手いのか、どんな逃げ方が下手なのかについて考えてみましょう。

下手な逃げ方

まず、下手な逃げ方について考えてみます。これまで、私の周囲で「あぁ~あ・・・」と言いたくなるような逃げ方をした人が何人もいました。

自分は逃げたつもりでも、ますます状況が悪化した人、袋小路に入ってしまってどうにもならなくなった人、人によって状況は様々です。

逃げるのが下手な人によく見られる特徴には、次のようなものがあります。

 自分の状況を把握できていない
 冷静さを失い目先の感情に走る
 耐えることができない

自分の状態を把握できていない

人生において、逃げるシチュエーションは色々あります。現代社会で一般的によくあるシチュエーションといえば、暴漢に襲われて逃げる、ブラック企業から逃げる、といったものでしょう。私の地元だと、田舎なのでイノシシに追いかけられるといったこともたまにあります。

これらの状況において、下手な逃げ方というのは、目先の恐怖に囚われて自分の状況を把握せず逃げることです。

たとえば、暴漢に襲われて逃げる場合、何も考えずただ逃げるだけだと、袋小路に追い詰められる結果になるかもしれません。ブラック企業から逃げるにしても、次の職がなく生活ができなくなった、再びブラック企業に入ってしまった・・・ということにもなりかねません。

ですから、逃げるにしても、まずは自分の状況を把握しなければならないのです。状況を把握するとは、今の自分に何ができるのか?、本当に逃げてもいい状況か?、といったことを把握するということです。

冷静さを失い目先の感情に走る

逃げた後、状況が悪くなる人は、目先の感情に走ってしまう人が少なくありません。というか、その場から逃げて状況を悪化させる原因のほとんどはコレです。

人間は感情の生き物だといわれます。感情は非常に強いエネルギーを持っているので、それなりの訓練や経験を積んでないとコントロールが難しいのです。そのため、かなりの割合の人たちが、目先の感情に走り、状況をますます悪化させています。

私が小学校のころ、学校の帰りに野良犬に追いかけられ車に跳ねられた子がいました。逃げることに必死になって、そのまま川に落ちた子もいました。パワハラ上司が嫌になり、環境がよくないときに無理に転職して給与、職場環境ともに悪化した人がいました。

目先の感情に支配されると、人は冷静な判断力を失います。

とにかくその場から逃げ出したい、私もこれまで何度もそのような状況を経験してきました。しかし、そのようなときほど、行動を起こす前に一度深呼吸して冷静にならないといけません。人が目先の感情に支配されて行動するとき、99%といっていいほど失敗するからです。

耐えることができない

耐えることができない人も、逃げたあと状況が悪化することが多いと思います。暴漢や野生動物に襲われた場合、まずその場から逃げることが先決ですが、それ以外のケースでは一時的に耐えることが必要なケースは多々あります。

転職などは、その典型的なケースです。

職場環境や待遇が酷く、すぐさま会社を辞めたくなるということがあります。実家住まいなら、後先考えなくてもなんとかなるかもしれませんが、そうでない人はあとのことを考えておかなくてはなりません。

とくに、転職はタイミングというものが非常に重要です。良くない求人しかない時期に無理に転職しても、いい職にはありつけないのです。

大企業などでは、興味のない部署に配属されたり、嫌な上司に当たったりすることもあります。そういった状況も、1~2年耐えられれば状況が好転することもあるのです。

人生にも運の流れというものがあり、運の流れが悪いときに行動しても良いことはありません。人生のそういった時期には、嵐が過ぎ去るのを待つように、耐えることが必要になるともあることを覚えておきましょう。

上手い逃げ方

翻って、上手い逃げ方とはどんな逃げ方でしょうか? ようは下手な逃げ方の逆になるのですが、ここではもう少し具体的に考えてみましょう。

逃げ方が上手い人の特徴には次のようなものがあります。

 逃げるときの準備をしている
 内部環境と外部環境を分析する
 耐えるべきときには耐える

逃げるときの準備をしている

逃げるのが上手い人というのは、前もって逃げるときのための準備をしているものです。

常に最悪の状況を想定し、「もしこうなったら、こうやって逃げよう」と考えているのです。そして、そのための準備もおこたりません。だからこそ、逃げるべきとき、タイミングよくすぐさま行動することができるのです。

事前に準備をしておくというのは、自分の損失を最小限に抑える努力をするということです。逃げたとき、自分にどんな損失があるのかを考え、それをできるだけゼロに近づけるような準備をしておくのです。

そうすれば、逃げたあと状況がさほど悪化することはありません。仮に悪化したとしても、すぐに前に近い状態まで復帰することができるでしょう。

内部環境と外部環境を分析する

ここでいう内部環境というのは自分の能力、外部環境というのは自分の身の回りのことです。

上手く逃げるには、自分のことだけを考えているだけではいけませんし、また自分のことを考えず身の回りのことだけを考えてもいけません。

自分と周囲の環境、この2つを考慮するからこそ、最良の逃げ道が見つかるのです。

「今の自分には何ができるのか?」「周囲の状況は逃げるに適しているか?」この2つを把握する必要があるのです。

たとえば、あなたが誰かに捕らわれたとしましょう。自分は格闘技をやっていて腕っ節には自信があるので、自分を捕えた相手は倒すことができる。そういう状況でも、捕らえられているのが孤島であれば、相手を倒しても逃げられない可能性があります。そういうときは、相手を倒すことだけでなく、孤島から脱出する方法も同時に考えておかないといけないのです。

逃げるというのは、実のところ結構難しいもので、ただ闇雲に逃げても上手くいかないのです。内部環境と外部環境を冷静に分析することで、上手く逃げられる確率を高めることができます。

耐えるべきときには耐える

現代人はこれができない人が少なくありません。何にでも無条件に我慢することには私も反対ですが、人生において、一時的に耐えることが必要な状況というのは確実に存在します。

逃げるにも、逃げるに適したタイミングというものがあるのです。

良いタイミングで逃げると、あっさり逃げられますが、悪いタイミングで逃げると、逃げられないばかりか、さらに大きな損失を被ったりします。

逃げるタイミングを計るには、耐えるべきときかそうでないかを判断する必要があります。そのためには、先に説明した内部環境と外部環境を分析する必要があるのです。

内部環境と外部環境を分析し、逃げるべきタイミングを計る、そして事前に準備しておく。これらができれば、あなたは状況を好転させるような、上手い逃げ方ができるようになるでしょう。