とりあえず仕事は真面目にやっておけ

「これは本当に自分のやりたい仕事じゃない」

このように言って、入った会社で真面目に仕事をしようとしない人がたまにいます。これは、学校を卒業したばかりの若者によく見られる傾向です。

しかし、何もできないうちから仕事を選り好みしているようでは、本当に自分のやりたい仕事など見つからないでしょう。かりに見つかったとしても、実務能力が追いつかないので、その仕事をさせてもらえない可能性が高いのです。

一応は自分で選んで入った会社組織なのですから、とりあえず言われたことくらいは真面目にやっておきましょう。そうしないと、いつまで経っても給料の高い仕事にはありつけないのです。

若いうちは実務能力を高めることが第一

今の日本の教育体制というのは、自分の適正がわかるような制度になっていません。そのため、学校を卒業しても、自分が何に向いているのかわからない人の方が多いはずです。

かつての私もそうでした。「自分には一体どんな仕事が向いているんだろう?」と、いつもそのように考えていたことを覚えています。

ただ、私はバイトでも正社員の仕事でも、やるからには真面目にやっていました。なぜなら、「お金をもらう以上、仕事は真面目にするべきだ」という考えがあったからです。

今振り返ってみると、そのときの考えは間違っていなかったと思っています。

私が最初に入った会社では、何人かの同期がいました。その中の一人に、雑用を任されると「なんで俺がこんなことしないといけないんだ?」と不機嫌になる人がいました。彼は、自分が気に入らない仕事を任されると、真面目にしようとしなかったのです。

しかし、こうやって真面目に仕事をしようとしない人は、後々必ず後悔することになります。

その人に何か突出した才能があれば話はべつですが、そういう人に限って、才能以前にやりたい仕事すらわかっていないのです。

とくに学校を卒業したばかりの若い人たちは、社会人としての実務能力がまだまだ未熟です。ですから、まずはどんな仕事でも真面目にやって、そつなくこなせるようにしておくことが大事なのです。

たとえば、「雑用はしたくない」という人がいます。たしかに私も雑用は極力したくありません。ですが、どんな仕事にも雑用はつきものです。ならば、雑用も真面目にやって短時間で終わらせるよう熟練したほうが得なのです。

自分が起業したとしも、メインの仕事以外の雑用が山ほど出てくるでしょう。かといって、それをやらないわけにはいきません。

お金があれば、まだ人を雇って雑用を任せることもできますが、最初からお金のある人はいないのです。お金のないうちは人に頼めませんから、自分で雑用をこなすしかありません。

そんなとき、雑用に時間をかけていてはメインの仕事に影響が出ます。それでは、新しい仕事を得る機会もどんどん失われるでしょう。

雑用以外の仕事も同じです。

上司の注目度が低いからといって、いい加減な仕事をすれば、まともな実務能力は身につきません。どんな仕事でも真面目にやっていると、そのうち「ここだけ押さえておけばいい」というポイントがわかるようになってきます。手を抜いてもいい部分と手を抜いてはいけない部分がわかってくるのです。

これがわかると仕事の要領は格段に良くなります。仕事を速くこなせるようになってくるのです。そうなると、あなたはますます仕事を任せられるようになり、色々なチャンスが巡ってくるようになるのです。

真面目に仕事ができない人は一生底辺

真面目に仕事をしていると、その仕事に対して注意力がつきます。若いころは、雑用も含め、とにかく色々と任されるので、それらを真面目にこなすことで広範囲の注意力が身につくのです。

ところが、真面目に仕事をしない人はどうなるでしょうか?

私はこれまで、色々な会社に顔を出してきました。そこで、真面目に仕事をしないまま年をとったような人をたまに見かけるのです。彼らは50歳になっても60歳になってもまともな仕事ができないので、どうでもいい簡単な仕事しか任されません。当然、給料も安いままです。

転職しようにも、まともな実務能力が身についていないので、高い給料をもらえる転職先など見つかりません。結局、そういう人は嫌々でも今の会社に留まるしかなくなるのです。そして、会社の業績が悪化したとき、あっさりと切られるのです。

先に、私の最初の会社にいた同期の話をしました。何年か前、当時の同期の一人から彼の話を聞くことがありました。どうやら彼は今、地元にある某代理店の営業マンになっているということでした。案の定というか、そこまで成績がよくないようです。

以前、友達がその会社に勤めていたので、私はその会社の給料がいくらか知っています。恐らく、よく見積もって年収350万といったところでしょう。その当時の私の年収からしても、150万円の開きがありした。

彼は地元の国立大学卒、私は地元の専門学校卒、本来なら彼の方が高収入になるはずです。彼の性格を考えると、最初の会社を辞めた後も行動は変わっていなかったのでしょう。結局は、何でも真面目にこなしてきた、私と彼の実務能力の差が収入の差となったということです。

どんな仕事も職業訓練と考える

とにかく、私が若い人たちに言いたいのは、「自分のやりたいこと以前に、まずは実務能力を高めることを考えよう」ということです。能力のない人に高収入な仕事は舞い込んできません。

もし、あなたが将来的に高収入になりたい、自分のやりたいことを見つけたいと考えるなら、まずは目の前の仕事を真面目にこなして実務能力を高めておきましょう。

そうすることで、「自分は、この仕事のこの部分は得意だな」ということがわかるようになるのです。そうした経験を繰り返すことで、あなたのやりたい仕事や適性が次第に明確になっていくのです。

最初に言ったように、今の日本の教育体制は個人の適性がわかるような仕組みになっていません。ですから、自分の適性を見極めるためにも、若いうちは目の前の仕事を真面目にこなす必要があるのです。

新卒時などは、まだまだ世間を知りませんから、色々な仕事を選り好みせずこなしていくうちに、「こんな仕事もあったのか!」と気づくことも出てきます。自分に予想外の能力があったことに気づくこともあるでしょう。

そうして次第に、自分の本当の適正や能力がわかるようになっていくのです。

将来的に独立起業をしたい人は?

将来的に会社組織ではなく、自分で独立や起業をしたいという人も、ひとまず目の前の仕事は真面目にやっておきましょう。目先の生活費を確保するためには、最低限、言われた仕事はそつなくこなす必要があるからです。

「今勤めている会社の仕事が面白くてのめり込んでしまう」という人は、その会社に勤め続ければいいと思います。そうでない人は、会社の仕事ばかりに時間を使いたくないと考えるでしょう。(実は私もそのように考えている一人です)

そういうときは、言われた仕事だけそつなくこなして、自分の時間を確保するようにすればいいのです。「アイツは仕事をやってない」と言われない範囲で頑張るということです。

そのためには、若いうちから色々な仕事を真面目にやって、実務能力を高め、仕事を人より速くこなせるようになっておくといいでしょう。仕事内容にもよりますが、私の場合、この10年くらいはどんな仕事でも同僚の2~3倍の速度でこなせるようになっています。

どこの会社でも、同僚が残業30時間やっているところ、私だけは残業10時間前後で済ませていました。かといって、他の同僚に比べて仕事が少ないわけでもありません。職場によっては、自分だけ早く帰ると白い目で見られることもありましたが、私は自分のやりたいことがあるので気になりませんでした。

私がそのようにできるようになったのも、若いころから真面目に仕事に取り組んできた結果です。どんな仕事も真面目にやっておいて損はありません。若いうちの仕事は、全て実務能力を鍛えるための職業訓練と考えましょう。

たとえ、どんなに自分のやりたいことがあろうとも、実務能力がないと始まらないのです。

若いうちに、そこを理解して何でも真面目にやってきた人は、いづれ本当に自分のやりたいことができるようになるでしょう。